【幼児教育の豆知識】子どもになかなか友だちができない…親としてどうすべきかについて徹底解説!
「うちの子、幼稚園で友だちがいないみたいなんです」と悩む親は少なくありません。子どもの交友関係ではあるけれど、親としては友だちと楽しく遊んでいる様子を見たいと思ってしまうもの。子どもに友だちがいないことは、本当に心配なことなのでしょうか。友だちができない原因や家庭でできる対策とともに、解説していきます。
友だちを作るために必要な「社交性」の発達とは
友だちがたくさんいる子、というと、「社交性が高い」ととらえられます。社交性とは簡単に言うと、他者とコミュニケーションをとり円滑な関係を作る能力。まずは、その社交性が幼児期にどのように発達するのか、そして、子どもにとって「友だち」とは何かを考えてみましょう。
幼児期の社交性の発達
友だちを作るのに必要な社交性。乳児から幼児期にかけて、子どもの社交性は段階的に発達していきます。
1〜2歳
まだ自分の世界が中心。他者に興味はあるけれど、一緒に遊んだりするよりも同じ場にいて別々のことをする「並行遊び」がほとんど。
3歳
ほとんどの子どもが集団生活に入り、少しずつ他者を意識して行動するように。ただ、まだ相手を思いやって譲る、遠慮するといったことは難しく、自分の思い通りにならないとケンカになることも。
4歳
徐々に協調性が身に付き、友だちと関わり合いたいという気持ちも大きくなってくる時期。順番に使う、譲り合うといったルールも少しずつ理解できるようになり、簡単なゲームやごっこ遊びを楽しめるようになります。
5〜6歳
大体の子どもが流ちょうに言葉を使うようになり、自分の気持ちも言葉で表現できるように。意見を主張するだけではなく、相手の話も聞いてどうすればいいのかを考えられるようになります。「あの子とは仲のいい友だち」という意識も芽生えてきます。
とはいえ、まだまだ自分中心的でケンカもよくあること。さまざまな友だちとぶつかり合いながら遊んでいく中で、少しずつ社交性が磨かれていきます。
3歳ごろまではまだ社交性に乏しく、友だちといった友だちがいなくても心配はありません。4歳ごろからは子ども自身が他者との関わりを積極的に求めていく時期なので、園以外でもたくさんの子どもと触れ合える機会を持つようにするといいでしょう。
子どもにとって「友だち」とは?幼児期の人間関係
「社交的になって、たくさんの友だちを作ってほしい」と親が思っていても、一般的に3歳ごろまでは一人遊びが中心で、「友だち」という認識もまだ乏しいかもしれません。相手に興味を持つというよりも、遊んでいる内容に興味をひかれて一緒に遊ぶ、という方が多いでしょう。つまり、「誰と遊ぶ」かよりも「何をして遊ぶ」かが子どもにとっては重要なのです。興味が移り変われば遊ぶ子も変わります。
その時期に、「友だちはできた?」と聞いても、子どもからはっきりした答えは得られないかもしれません。一度でも一緒に遊べば「友だち」と考える子どももいます。4,5歳になると波長の合う特定の子と遊ぶケースも増えてきて、そのころにやっと「友だち」と認識する子もいるでしょう。
社交性の発達は子どもによってまちまちです。また性格も異なるので、小学校に入学しても一人遊びが好きな子どももいます。「友だちができなくて悲しい」と本人が悩んでいるのであればサポートが必要ですが、特に問題と考えていないようであれば、少し様子を見ましょう。友だちとの距離感、付き合い方も、子ども自身が見つけていくものなのです。
子どもに友だちができない原因とは
4,5歳は徐々に中のよい友だちができてくる時期。周囲の子どもが「友だちと遊ぶ」と話していると、「うちの子は…」と心配になる親もいるでしょう。周囲に比べて友だちができるのが遅いのは、いくつかの理由が考えられます。
性格や気質の問題
友だち作りに一番影響しやすいのは、生まれながらに子どもが持っている性格や気質です。例えば、内向的で人見知りしやすい、慎重派といった性格の子どもは、自分から積極的にアプローチすることが難しい場合も。繊細で他者の目が気になる、または自分のペースを乱されたくないという理由で、一人を好む子どももいます。
そうした子どもは、親が「もっと友だちを作らないと」とプレッシャーをかけると、より身構えてしまうかもしれません。過度に干渉せず、その子のペースを尊重してあげることが大切です。
一方で気を付けなければならないのが、自己中心的な性格の子どもです。なんでも自分の思い通りにしようとして、かなわないと攻撃的になる。そんな態度を繰り返していると周囲から距離を取られてしまいます。そうした傾向にあると親が気付いたり、先生から指摘を受けたりしたら、人への接し方についてわかりやすく話して聞かせてあげることが必要です。
取り巻く環境の影響
年度の変わり目や引っ越しをしたばかり、周囲に性格や考え方が合わない子が多いなど、環境による影響も無視できません。環境が変わると、「明るく友だち付き合いができるようになるケースもあります。
また、保育園や幼稚園の方針によっても子ども同士の関わり方は変わってきます。遊びの内容や誰と遊ぶかなどを子どもたちが決める“自由保育”が多い園では、自主性が育ちやすい反面、一人遊びが好きな子や集団が苦手な子は大半を一人のまま過ごす、といったことも起こり得ます。自身の子どもに合った園を選ぶとともに、先生と頻繁に情報交換をして、適切な声掛けやサポートを依頼しておくといいでしょう。
家庭でのコミュニケーション
子どもに友だちができない、と感じたら、一度家庭の状況を見直すのもいいかもしれません。親子や家族で頻繁に会話をしているでしょうか。親が怒ったり指示したり、といった一方的な投げかけになっていないでしょうか。
子どもの社交性の土台は、家庭内でのコミュニケーションです。子どもの考えを引き出し、言葉に耳を傾ける。「いってきます」「ありがとう」「ごめんね」といったあいさつを習慣にする。そうした基本的なコミュニケーションができていれば、子どもも友だちに対して同様にふるまい、良好な関係を築くことができるでしょう。
また、他者との交流が少ない家庭の場合、子どもは家族やごく一部の知人としか触れ合わないため、新しい交友関係を築くハードルが高くなりがちに。特に現代は核家族化で祖父母と触れ合うことも少なく、親戚や町内の付き合いも減少しています。まずは親が積極的に人との交流を図り、その姿や方法を子どもに見せてあげることが大切なのです。
発達に問題がある可能性も
神経発達障害により、友人関係がうまく結べないケースもあります。自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは対人関係で問題を抱えることが多く、相手の気持ちを想像して対応することが苦手。他者への関心が薄く一人遊びを好むなどの特徴が見られます。注意欠如・多動症(ADHD)では、思い付きですぐ行動する、衝動的に他者を傷つける言動をとるといったことも。
もちろん、友だちができないことが即発達障害に結び付くわけではありません。気になったら子どもの生活全般の様子をよく観察し、場合によっては専門家への受診を検討しましょう。
子どもの社交性が育つ親の接し方
子どもの社交性を育てる土壌となるのは家庭です。もっとも身近なロールモデルである親が社交性を発揮することはもちろん、子どもの気持ちに寄り添い、不安を払しょくするように接していくことが大切です。
「友だちがすぐできなくても大丈夫」と伝える
親としては、何となく「子どもにはたくさん友だちがいてほしい」と思ってしまうかもしれません。しかし、自分の周囲を考えてみれば、たくさん友人がいる人もいれば、一人で静かに過ごすのを好む人もいることに気づくはずです。過去の自分を振り返っても、たくさんの人と付き合っていた時代、あまり人の輪を広げなかった時代と変遷があるのではないでしょうか。子どもにも、「友だちになりたいなら仲よくしたらいいし、一人でいたいなら無理をしなくてもいいよ」「今はお友だちが少ないかもしれないけど、自分らしくいれば気の合う友だちができるよ」と安心できる声掛けをしてあげましょう。
友だちが少ないからといって、その子の価値が下がるわけではありません。他の面での才能や魅力をしっかりと見つめてあげることが大切です。
子どもの気持ちを丁寧に聞いてあげる
子どもの話にはよく耳を傾け、共感してあげることが最も大切です。「〇〇くんが意地悪をした」と聞くと、心配のあまり「なぜそんなことになったの?」「あなたももっとはっきり意見を言わなくちゃダメよ」と根掘り葉掘り聞いたり、すぐアドバイスしたりしてしまうかもしれません。しかし、否定や指示の言葉は子どもの心にふたをして話しにくくしてしまいます。まずは、「それは嫌だったね」「悲しかったね」と共感してあげましょう。十分に子どもの気持ちを聞けたと思ったら、次はどうすればいいかを自分で考えられるようにサポートしてあげます。
子どもの気持ちを無理に引き出すのは難しいので、日ごろから話しやすい雰囲気をつくることが大切です。
気持ちを言葉にすることで、子どもは自分の感情を整理できます。また、親が話を否定せずに聞いてくれるという安心感が、子どもにとっての心の支えになります。
具体的な話しかけ方などを教える
幼い子どもはまだ、どうやって仲良くなるのかの具体的な方法を知りません。たとえば「おもちゃを貸してあげると喜ばれるよ」「名前を呼んで話しかけてみよう」「〇〇ちゃんの好きなキャラクターの文房具を持っている子とは話が合うかも」といった具体例を、自分の経験をふまえて伝えてあげましょう。笑顔であいさつする、ウソをつかないなど人間関係の基本も教えてあげるといいですね。
絵本やごっこ遊びも、対人関係を学ぶツールになります。ストーリーの中で「友だちを誘ってみる」「仲間に入れてと話しかける」といった行動を疑似体験することで、現実の場面でのヒントとなります。
友だちができないことを責めない
友だちがいないのが心配だからといって、「どうして友だちと仲良くできないの?」「一緒に遊びなさい」などと責めても、本人もどうしたらいいのかわからないことも。責められたことで友だち作りについて負のイメージを抱いてしまうと、さらに人を避けてしまうこともあります。親は子どもの気持ちに寄り添って、「最初に話しかけるのはドキドキするよね」など共感する姿勢を持つことが重要です。
子ども同士でトラブルがあったなら、その原因を一緒に考えましょう。「次はどうすればいいと思う?」「明日、ごめんなさいって伝えてみようか」などと問いかけることで、子ども自身が解決のヒントをつかむことができます。幼いころのケンカやトラブルは、人間関係や社会性を学ぶステップの一つ。失敗と反省を繰り返す中で、子どもはよりよい人付き合いのスキルを身につけていくのです。
親の不安は子どもに伝わるもの
親が「うちの子、大丈夫かな」と過度に心配していると、その不安は子どもにも伝わってしまいます。子どもは親の表情や言葉、態度から「友だちができないのは悪いこと」と受け取ってしまい、そんな自分に自信を無くしてしまうのです。
親は、「今はまだ友だちを作る練習中」「そのうち仲のいい子もできる」と考えて、深刻になりすぎないように、また子どもにプレッシャーをかけすぎないようにしましょう。「ママも人見知りだったけど、今は大切なお友だちができたよ」と自分の経験を話してあげたり、「あなたは優しくてとても素敵な子だから、きっと仲良くできる子ができるよ」と子どもが自信を持てるような声掛けをしてあげたりするといいでしょう。
親が余裕のある態度で接することで、子どもも安心して自分らしく人間関係を築いていけます。不安なときは子どもにぶつけるのではなく、パートナーや信頼できる周囲に相談するといいでしょう。
日常生活でできる!友だち作りのサポート
子どもへの接し方が分かったところで、日常生活に取り入れられる具体的なサポートを見ていきましょう。友だち作りのきっかけを作るのは、幼少期の子どもだけでは難しいこと。親が積極的に行動していく必要があります。
遊び場や地域のイベントに参加する
地域の子育て広場や公園、子育て世代の交流イベントなど、親子で参加できる場には積極的に出てみましょう。親と一緒なら安心して過ごせるので、子どもも自然と他の子どもと交流できるでしょう。無理に遊ばせようとせず、楽しく過ごせるよう見守る姿勢が基本です。
園や学校以外のつながりを作る
保育園や幼稚園、学校にこだわらず、さまざまなコミュニティで交友関係を結べるようにチャレンジするのもひとつです。
集団で行う習い事や地域の子ども会などの集まり、ボーイスカウトやボランティアといった活動でもいいでしょう。いずれも同じ目的を持って行動するので、自然と交流が深まりやすくなります。
一つのコミュニティで安定した人間関係ができれば自信が付き、園や学校でも徐々に友だちができていくかもしれません。
遊びの中で協調性を高める
子どもにとって、遊びは最大のコミュニケーションツールです。親子でブロックやままごと、砂場遊びなどをすることで、「貸して」「どうぞ」「いっしょにやろう」といったやり取りが生まれます。簡単なカードゲームなどでは、ルールを守ることが学べます。
これらを通して複数人で遊ぶ楽しさを知り、協調性を培っていくうちに、友だちとも一緒に遊んでみようと思うきっかけとなるでしょう。
不安であれば専門家に相談を
さまざまな工夫をしても子どもがなかなか人と関われない、または極端な拒否反応を示す場合は、発達の専門家に相談してみましょう。近年は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)といった神経発達特性を持つ子どもへの理解も進んでいます。子どもに合った対処法のアドバイスを受けることで、親も落ち着いて接することができます。
保健センターや発達支援センター、小児科などで相談が可能です。不安に思うのであれば、一人で悩まず早めに動くことで、子ども自身も無理なく自分らしく成長できる道が見えてきます。
まとめ
子ども自身の「ペース」を信じてあげる
友だちがたくさんできる子もいれば、少人数とじっくり関係を深めたい子もいます。どちらが良い・悪いではなく、「その子にとって心地よい人間関係」が築けているかが何よりも大切。焦らず、他の子と比べすぎず、成長を見守りましょう。
親も悩みすぎず、相談しながら成長を見守ろう
子どもの友だち関係について悩んだら、一人で抱え込まずにパートナーや園の先生、同じく子育て中の友人などに相談してみてください。話すことで気持ちが軽くなり、新しい視点が見えてくることもあります。
子どもの個性を認め、受け止めて、成長とともに気の合う友だちができることを信じて見守っていきましょう。

株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。

【執筆者】逸見 浩督(へんみ ひろただ)
株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。