【幼児教育の豆知識】子どもの歩き始めが遅いと思ったら…目安の時期とサポート法について徹底解説!
「子どもが歩き始めるのは1歳~1歳半」という表記をよく見かけます。自分の子どもが1歳半近くになって歩くそぶりを見せないと、「大丈夫かな」と不安になる親も多いよう。「病院を受診したほうがいいのか迷う」という声も聞かれます。
今回はそんな悩みのヒントになるよう、子どもがひとり歩きを始めるまでの大体の時期や、家庭でできる歩くためのサポートなどを紹介しています。病院受診の目安についても触れているので、参考にしてくださいね。
Contents
なかなかひとり歩きができないわが子、どう考える?
周囲と比べて歩き出すのが早い子もいれば遅い子もいます。この差について親はどのように考えればいいのかを解説していきます。
乳児期は全体的に個人差が大きい
赤ちゃんは、生まれながらに持っている体格も違えば、発達の速さも大きく異なります。したがって、歩き始める時期だけではなく、あらゆる発達において個人差が大きいのが乳児期。
周囲の同月齢の子どもが何かできるようになると、「うちの子は?」と思ってしまいがちですが、「子どもによって発達はまちまち」ということを前提に、落ち着いて考えることが大切です。
歩くのが遅くても、デメリットがあるわけではない
早いと生後8~9カ月ごろに歩く子もいれば、2歳をすぎてから歩き始めるゆっくりタイプの子もいます。生まれつき体格がしっかりしている、手足の力が強いといった子は、早めタイプが多いようです。
早くから歩けたから体の成長にメリットがある、遅いとデメリットがある、ということでもありません。一旦歩き出せば、すぐ同じように走ったり跳ねたりできるようになります。
逆に、まだうまくつかまり立ちもできないのに無理やり歩かせようとすると、子どもの骨格などによくない影響が出る危険性も。心配しすぎず、わが子のペースを見守ってあげましょう。
「何か障害があるのでは」と心配になる人もいるかもしれません。その場合は、歩くことだけではなく全体的な成長の問題がないかを専門家に確認してもらう必要があります。発達の不安については後半に解説していきます。
歩き始めるまでの発達ステップ
赤ちゃんは突然歩き始めるわけではありません。はいはい、つかまり立ちなど歩く準備段階ともいえる動きも含めて、できるようになる目安の時期を知っておきましょう。
ひとり歩きまでのステップと月齢の目安
2023年に行われた調査結果(※)を参考に、赤ちゃんがひとり歩きをするまでのステップと目安の月齢を紹介します。
ずりばい・はいはい
生後4~5カ月頃から、早い子どもは「ずりばい」を始めます。ずりばいとは、おなかやひざを床につけた状態で移動する動きのこと。その後、両手両足でしっかり体を支えられるようになると、おなかが床から浮いた状態で動く「はいはい」にステップアップします。生後7~8カ月未満で約半数、11~12カ月未満でほぼ全員がはいはいができるようになります。
つかまり立ち
はいはいで筋力が鍛えられると、何かにつかまって自分の力で立ちあがる「つかまり立ち」ができるようになっていきます。生後7~8カ月未満で約32%、10~11カ月未満で約88%、1年2~3カ月未満でほぼ全員がつかまり立ちができるように。
伝い歩き
つかまり立ちができるようになり、さらに体のバランスがとれるようになると、物につかまったまま歩く「伝い歩き」へと進化します。こちらははっきりとした月齢の調査がありませんが、つかまり立ちから間もなく伝い歩きをする子どもがほとんどでしょう。
そして、徐々に歩き方が安定すれば、物につかまらずに歩く「ひとり歩き」ができるようになります。
ただ、子どもによってはほとんどはいはいをせず、ひとり歩きへ急速にステップアップしたりと、必ずしも上記のとおりに発達するわけではないことを理解しておきましょう。
(※)こども家庭庁/令和5年乳幼児身体発育調査
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/b32105e4-fa26-42eb-97d0-2e5cbaef703a/25a6391e/20241225_policies_boshihoken_r5-nyuuyoujityousa_10.pdf
ひとり歩きを始める月齢の目安
ひとり歩きができる子どもの割合は、1歳未満で30.9%、1歳1~2カ月で半数を超え、その後徐々に増えて1歳9~10カ月ではほぼすべての子どもが歩けるようになっています。
月齢ごとの、ひとり歩きができる子どもの割合
数字で見ると、1歳4~5カ月ごろで歩けていない子どもはごくわずかのように感じますが、SNSなどでは「うちの子は1歳半まで歩かなかった」というコメントもよく見られます。あくまで目安なので、「いつまでに歩かなくてはならない」と考えずに落ち着いて見守りましょう。
はいはいをしない“シャフリングベビー”も
赤ちゃんの中には一般的なはいはいを行わず、代わりにお座りの状態でお尻の位置をずらしながら移動する子どももいます。足を引きずる様子から“シャフリングベビー”と呼ばれます。
はいはいをしないのは、足のうらや手のひらの感覚が特に敏感だからと考えられています。足の裏を触ると嫌がるそぶりを見せたり、抱っこしても足を床に付けないように曲げたままだったり、という特徴が見られれば、シャフリングベビーかもしれません。
一般的なはいはいを行わないため心配になる親もいますが、シャフリングベビーの多くは特に問題がなく成長しています。ただ、「身長や体重が平均よりぐんと低い」「母乳やミルクをあまり飲まない」「言葉への反応が薄い」など、その他の発達にも問題があれば、疾患が関係している可能性も。気になる場合は、小児科などを受診しましょう。
なぜ歩き始めが遅いのか
子どもが歩き始めるのが遅くなるのは、主に生まれ持った性質、体質のほか生活環境も影響していると考えられます。中には、障害や疾患が関係している場合も。それぞれの原因を具体的に見ていきましょう。
性格や「やる気」の違い
好奇心旺盛な子どもであれば、「あれはなんだろう、取りにいきたい!」というように、どんどんと自分で動こうとし、自然と歩く動作につながります。逆に慎重な性格の子どもは歩くのがややゆっくりかもしれません。
ただ単にまだ歩く気がなかったり、はいはいが好きだったりということもあります。子どもの中に「歩きたい」という意欲が芽生えるまで、じっくり待ちましょう。
兄弟や登園の有無、生活環境の影響
兄や姉がいると、歩くのが早い赤ちゃんが多いようです。まねをして歩こうとし、一緒に遊びたいために早く移動をしようとする意欲が生まれます。保育園に通っている子どもも同様で、歩ける子どもが大勢周囲にいると、自身のやる気も刺激されるのです。
子どもが過ごす生活環境も原因の一つに。常に部屋に物があふれていると、子どもは歩きにくくなります。安全につかまれる家具や、子どもが歩けるスペースを確保してあげるといいでしょう。
感覚過敏や筋力の問題
体質や、一時的な体の発育の遅れで歩くことが遅くなる子どももいます。シャフリングベビーのように、手のひらや足の裏の感覚が過敏で床に触れたくない、といった赤ちゃんもそのケースです。
神経系の発達が未熟で筋肉の緊張が弱い「乳児良性筋緊張低下症」の子どもも、運動能力の発達は比較的ゆっくりに。
いずれも成長するに従って歩けるようになるのがほとんどです。ただ、まれに治療が必要な筋肉の病気を抱えている子どももいるので、心配であれば専門家に相談してみましょう。
発達相談が必要なサイン
発達障害が原因で歩くのが遅くなっているケースもあります。その場合、主に次のような特徴が見られます。
・はいはいもつかまり立ちもまったくしない
・声をかけても目が合わない
・言葉が遅い、意味のある単語を話さない
・音や光に過剰に反応する など
これらの場合は、後述する「発達が気になるときの専門家相談ガイド」を参考に、受診を検討してみましょう。
ひとり歩きを促す家庭でのサポート術
普段の生活の中でも、工夫次第で赤ちゃんのひとり歩きのサポートができます。1歳を過ぎて、体格や体力が十分備わっているようであれば、チャレンジしてみてもいいでしょう。
声をかけ、褒めて「歩きたい気持ち」を引き出す
親が喜んでくれると、子どもは「もっとやってみよう!」と思えるもの。赤ちゃんがつかまり立ちをしたり、手を離して1,2歩歩いたりできればしっかり褒めて、「歩くのは楽しい」という気持ちを引き出していきましょう。
おもちゃなど興味を引くものを遠くに置いてみる
好きなおもちゃや、触ってもいい小物など子どもにとって目新しいものを、少し離れた場所に置いてみます。興味をひかれれば自分で取りに行こうとし、歩くきっかけとなるでしょう。低い台の上やソファの上などに置けば、つかまり立ちの練習にもなります。
家具の配置など安全に歩ける環境作り
子どもがつかまり立ちできるように、しっかりしたローテーブルや低い棚を配置するのも一つ。間を少しだけ開けておけば、次の家具に手が届くまでバランスを取って移動する練習になります。同時に、床の物を減らし歩けるスペースを確保してあげましょう。
その前に注意しなくてはならないのは、危険の回避です。
・歩くようになると触れる範囲が広がるので、危険なものは子どもの手の届かないところに収納する
・引き出しにつかまることもあるので、開かないようにロックする
・つまずかないように床のコードなどは邪魔にならない場所にまとめておく
・床や家具の角にで頭をぶつける危険性もあるので、クッションフロアを敷く、コーナーガードをつけるなど
こうした対策を事前に行っておきましょう。
足裏・手のひらのマッサージなどのシャフリング対策
シャフリングベビーの場合は、日ごろから軽く足の裏や手のひらにさわったり、マッサージしたりと、感覚刺激を与えることを意識して行います。そうした刺激に慣れてくれば、徐々につかまり立ちもできるようになるでしょう。
発達が気になるときの専門家相談ガイド
子どもが歩き出すのが遅いことについて、発達の問題があるのか受診で確かめたいと思っても、時期が早すぎると判断が難しいことも。いつのタイミングで専門家に相談したらいいのか、どのような窓口があるのかを紹介します。
「歩かない」が他の遅れと混在する場合の受診タイミング
発達について相談する機会として、「1歳6カ月検診」があります。1歳半は、約95%の子どもが歩けるようになっている時期。このタイミングで子どもが歩いていなくて、かつ先述の「発達相談が必要なサイン」のような特徴が見られたら先生に相談し、専門家への受診を検討してみましょう。
発達障害以外にも、筋肉などの疾患が隠れている場合も。それらの場合、早期に治療や対策を行った方がよいケースもあるので、気になるのであれば積極的に相談してみましょう。
地域の相談窓口や、小児科・発達外来などを利用する
子どもの発達に不安がある親のために、各市区町村には発達相談専門窓口や子育て支援センター、児童発達支援センターなどが設けられています。受診の前にまずはそうした窓口で相談してみるのもいいでしょう。窓口によっては、専門家がいる小児科や発達障害外来のある医院などを紹介してくれる場合も。
医師の診断が下りれば、必要に応じて理学療法士による専門的なリハビリテーションなど、歩行に向けてのサポートもしてもらえます。
まとめ~個性を尊重し、穏やかなサポートで見守ろう~
発達スピードは個人差が大きく、焦らず見守る姿勢が大切
個人差が大きい歩き始めの時期。親はそのことを十分に理解し、子どものペースを尊重してあげることが大切です。今だけのずりばいやはいはいのかわいさを堪能しつつ、いつか歩く日をゆったりと楽しみに待ちましょう。
無理のない範囲で、家庭でできる工夫とサポートを
子どもの歩く意欲を引き出せるように、家具の配置などできる範囲で工夫をしてみるのもいいでしょう。ただ、無理やり歩かせいようとしないこと。歩く練習として、手押し車を使う、親と手をつないで歩かせてみる、といったことも言われていますが、いずれも強制するのは逆効果です。子どもの体が十分成長して、子ども自身が「歩きたい」と思ったときに機会を与えてあげることが重要なのです。
必要なら専門家と連携し、子どもの成長をサポートしよう
子どもが歩かないことへの不安が募ると、子育てにもナイナスの影響が出てしまいます。一人で抱え込まず、適宜専門家に相談を。発達に問題があってもなくても、正しい知識を得て適切なサポートをしてあげることが健やかな成長につながります。

株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。

【執筆者】逸見 浩督(へんみ ひろただ)
株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。