【幼児教育の豆知識】幼稚園と保育園、どっちがいい?選び方のポイントを徹底解説!
子どもを通わせるなら保育園か、それとも幼稚園か。特に共働きの夫婦やこれから共働きをする予定の家庭では悩むところかもしれません。
仕事をするなら保育園しか選べないのか、そもそも保育園と幼稚園はどう違うのか、どんな基準で選べばいいのか。ポイントを押さえて解説していきます。
Contents
幼稚園と保育園、どちらを選ぶべきか悩むあなたへ
幼稚園、保育園といっても、実は各園には多様な個性があり、ひとまとめにできないもの。「幼稚園だから」「保育園だから」と思い込まず、まずは見学に参加して、親自身がどんな園かを体感することが重要です。その上で、次のような基準で考えてみるといいでしょう。
家庭の状況や教育方針、子どもの性格に合わせた選択を
家庭の状況
両親ともに仕事をするのであれば、就労時間の間は預かってもらえるところが必須条件になります。どちらかが今は働いていなくても今後働く予定はあるのか、先々を見越して考えましょう。
教育方針
もう一つ、大切なのが家庭の教育方針です。どんな子どもに育ってほしいのかを夫婦間で早期に共有しておくことで、それに合った方針の園を選ぶことができます。
子どもの性格
子どもの性格もひとつの判断基準となります。自分の子どもはどんな状況で楽しく、のびのび過ごせるのか。親だからこそわかる視点で、各園の子どもたちの様子や過ごし方をチェックしてみましょう。
幼稚園と保育園の基本的な違い
行政の制度上では、幼稚園と保育園には明確な違いがあります。それぞれの設けられた目的から、預かり時間や教育内容などの違いを見ていきましょう。
所轄官庁と目的の違い
幼稚園は文部科学省が管轄する施設で、その目的は「幼児を保育し,適当な環境を与えて,その心身の発達を助長することを目的とする学校」であり、「小学校以降の生活や学習の基盤を培う学校教育のはじまりとしての役割を担」う、とあります(※1)。つまり、幼稚園は小学校の前段階としての“教育施設”なのです。
一方、保育園は児童福祉法によると「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的」(※2)とされています。管轄するのは子どもと家庭の福祉・健康の向上を図るこども家庭庁。幼稚園と違って、主に働く親と子のための“福祉施設”として位置づけられます。
(※1)参照/文部科学省「第2節幼児教育の意義及び役割」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1395402.htm
(※2)参照/児童福祉法
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164#Mp-Ch_3
対象年齢と保育時間の違い
幼稚園と保育園では、入れる年齢が異なります。幼稚園に入園できるのは、基本的に満3歳から小学校入学までの子ども。集団の中で学んでいくスタートとして、3歳が適切な年齢とされているのです。それに対して一般的な保育園では、未就学の子どもすべてを受け入れているので、0歳から通うことができます。
また、園で過ごす時間も大きく異なります。幼稚園は基本的に4時間までとされ、午後1時半や2時ごろには降園して家庭で過ごす、という流れに。幼児が集団で過ごし、何かに集中して取り組む時間として、4時間程度が適していると考えられているからです。一方で保育園の預かり時間の基準は倍の8時間。夕方17時、18時ごろまで預かってもらうことができ、有料で延長保育が可能なところも多数あります。
教育内容やカリキュラムの違い
幼稚園は教育施設なので、子どもたちの“学び”を重視しているといえます。学びというと「国語や算数を教えてもらえるのかな」と思う人もいるかもしれませんが、そうした早期教育とは異なります。文部科学省によると、幼稚園においては「遊びを重要な学習として位置づけ」、遊びによって主体性や好奇心、表現力、他者と関わる力など就学後の土台となる力を養う、とされています(※)。つまりは、人間力、生きる力の育成が目的ともいえるでしょう。
保育園はというと、「親の代わりに保育をするところ」という意義が第一であり、保育の方針は各園によりさまざま。幼稚園と同様に子どもの心身を育む取り組みを行ったり、知育、体育などに力を入れたりしているところもあります。
幼稚園、保育園ともに教育内容や取り組みは個々の特色が強いので一概には言えません。各園の教育方針、保育方針をしっかり確認することから始めましょう。
(※)参照/文部科学省「第2節幼児教育の意義及び役割」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1395402.htm
幼稚園の特徴と注意点
教育施設である幼稚園においては、教育カリキュラムが充実しているところも多数。その他どんな特徴や注意点があるのか、押さえておきましょう。
子どもの学びを重視したカリキュラム
子ども一人一人の心身の発達を助け、「生きる力」の基礎を培うのを目的としている幼稚園。その達成のために、「創意工夫を生かし,幼児の心身の発達と幼稚園及び地域の実態に即応した適切な教育課程を編成する」ことが学習指導要領で定められています(※)。そのため、遊びはもちろんですが、さまざまなカリキュラムを組んでいるところも多くあるのです。
例えば、絵画制作展や音楽発表会、生活発表会などのイベントを設け、表現力や想像力を高めたり、身体能力を引き出す体育、国際的な視野を広げる英語を取り入れたり。異年齢の子どもと触れ合って社会性を育む、クッキングを通して食育を行う、などの取り組みをしている幼稚園もあります。
幼児期に育みたい力に注目して、適切な教育カリキュラムを計画的に組み、実行しているのが幼稚園といえるでしょう。
(※)参照/文部科学省「学習指導要領『生きる力』」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/sou.htm
保護者が行事などに参加する機会が多い
幼稚園は家庭と連携し、家庭における幼児教育の支援も行うものとされています。したがって、保育園と比べると親が行事に参加したり、子どもとともに園で過ごしたりといった機会も多くあります。
参観日や発表会、運動会などの行事への参加はもちろん、園によってはすべての親が何らかの役について、バザー運営や餅つき大会、卒園アルバム作成などを行う場合も。
頻繁に園に足を運ぶことで、普段の子どもたちの様子がよくわかり、園の方針の理解や先生との連携がしやすくなるのはメリットと言えます。また、他の保護者と接する機会も多いので、気軽に子育て相談ができたり、降園後に一緒に子どもを遊ばせたりと、親子ともに交友を広げやすいのが幼稚園です。
ただ、平日に行われる催しも多く、多忙な親の場合は役が負担になるかもしれません。あらかじめ、親に求められる参加度を確かめておくといいでしょう。
預かり時間が短いため、共働き家庭には不向きな場合も
幼稚園の教育時間は基本的に4時間。昼過ぎにはどちらかの親が迎えにいき、その後は家庭保育となります。また、小中学校と同じように夏休みなどの長期休みも設けられています。そのため、幼稚園に通わせている家庭は母親が専業主婦やパートタイマーのケースが多いよう。両親ともにフルタイム勤務となると、選択肢から外さざるを得ない場合もあります。
ただ、昨今の核家族化、共働き家庭の増加を受けて、早朝、夕方の延長保育や長期休み中の保育を取り入れている幼稚園も増えてきました。気になる園があれば、どのようなサポート体制があるのかを確認してみましょう。
保育園の特徴と注意点
幼稚園が教育施設であるのに対して、保育する福祉施設としての保育園。その特徴は何と言っても長時間の預かりが可能なことです。加えて、幼稚園同様に教育的カリキュラムが充実している園もあります。
0歳から長時間子どもを預かってもらえる
令和6年の調査によると、幼稚園に通う児童は約76万人、それに対して保育所は約187万人と倍以上(※)。一番の理由は、出産後も共働きのスタイルを維持する夫婦が増えていることでしょう。子どもが0、1歳で妻が会社に復帰し、数年後にはフルタイムに戻ろうと考えれば、預かり時間の短い幼稚園は選びにくいということに。
その点保育園は、0歳から通わせられて早朝から夕方まで預かってもらえます。長期休みもありません。親の行事への参加も少なく、あったとしても基本的に土日に行われます。
子育てとともに働き方をキープしたいという親にとって、保育園はありがたい存在なのです。
(※)参照/文部科学省「学校基本調査-令和6年度 結果の概要-」
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/2024.htm
こども家庭庁「保育所関連状況取りまとめ(全体版)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4ddf7d00-3f9a-4435-93a4-8e6c204db16c/82ad22fe/20240829_policies_hoiku_torimatome_r6_02.pdf
園によって教育的内容が充実しているところも
保育園は保護者の代わりに子どもを養護する役割があるため、生命や健康の保持、食事や排せつなどの基本的生活習慣の確立が大きな機能としてあります。では、教育施設ではないので子どもの教育は全く行われないのか、というとそうではありません。
「保育所保育指針」においては、保育所における教育的機能は幼稚園教育要領との整合性を図るものとされ、道徳性や協調性、思考力、言語能力、感受性や表現力などを育んでいくことが目標として掲げられています(※)。
保育所によって取り組み方は異なりますが、幼稚園と同様に造形遊びや運動、音楽、英語などに力を入れているところも多くあります。
(※)参照/厚生労働省「保育所保育指針」
希望の園が選びにくい場合も
幼稚園と違い、認可保育園への入園は市区町村が調整して決定します。希望者は市区町村へ申請し、保育の必要度に応じて各保育所に割り振られます。「あの保育所にお願いしたい」と希望を伝えていても、申込者の数によりそれ以外の園に決まってしまうこともあるのです。
認定こども園という選択も
幼稚園、保育園のほかにも認定こども園という選択肢があります。幼保一元化政策のもと誕生したもので、特に2015年以降に従来の幼稚園、保育園がこども園へと移行する動きが加速しました。
認定こども園とその種類
認定こども園は保育園と幼稚園両方の機能を持つ「学校及び児童福祉施設」であり、こども家庭庁の管轄となっています。幼稚園、保育所双方の機能を持つ「幼保連携型」、認可幼稚園が長時間の預かりを行うなど保育所的な機能を備えた「幼稚園型」、認可保育園が保育を必要としない家庭の子どもも受け入れる「保育所型」、認可外の施設が各地域の実情に合わせて設置する「地方裁量型」と、4つの種類があります。
こども園の増加に合わせて園児数も増加傾向にあり、令和6年度には幼保連携型認定こども園に通う園児は約66万人、幼稚園型認定こども園は約7万人(※)となりました。
(※)参照/こども家庭庁「保育所関連状況取りまとめ(全体版)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4ddf7d00-3f9a-4435-93a4-8e6c204db16c/82ad22fe/20240829_policies_hoiku_torimatome_r6_02.pdf
認定こども園の特徴・注意点
親の就労の有無にかかわらず入園できるというメリットや、1号、2号など認定によって入園枠が決まっているという注意点など、認定こども園の特徴について知っておきましょう。
フレキシブルな働き方に対応できる
認定こども園は、入園できる対象が広いことが一番の特徴です。4つの種類により入園できる年齢は異なりますが、幼稚園型であっても幼保連携型、保育所型であっても、親の就労状況に関わらず入園が可能。
「共働き世帯でも幼稚園に通わせたい」
「将来の就労に向けて、長時間預かりが可能なところに入園させたい」
といった親の希望に応えてくれます。認定こども園であれば、一般の保育所のように「親が退職したら退園」、という規定もありません。逆に、「今はパートだけれど、1,2年後には正社員で働きたい」といった親の働き方の変化にも対応しやすいのです。
一般の保育園や幼稚園と異なり、さまざまな就労スタイルの家庭の子どもが入園しているので、子どもも親も視野が広がりやすいともいえるでしょう。
入園できる枠が限られることも
認定こども園においては、保育の必要性の有無により入園枠に差があるところもあります。例えば、幼稚園型認定こども園では、1号(保育が必要な事由がなく、4時間までの預かりで通園)認定の子どもをメインとして、2号(保育が必要で、8時間の保育時間で通園)認定の子どもの入園枠は少ないことも。希望の園があればあらかじめ入園枠数を確認しておくといいでしょう。
2号と3号認定(3歳未満で保育を必要とする子ども)の子どもは、保育園と同様に市区町村に利用申し込みをし、入園先が決定されます。
共働き家庭が考慮すべきポイント
特に共働き家庭では、両親の仕事の都合が幼稚園、保育園選びに大きく影響します。選択において特に考慮すべきポイントをまとめました。
保育時間と延長保育の有無
両親ともに働くのであれば、ある程度の時間を預かってもらえるところを選ぶ必要があります。そうすると、一般の幼稚園は難しいことも。ただ、延長保育や長期休暇中の保育を取り入れている幼稚園であれば共働き家庭でも利用しやすいでしょう。
保育園であっても制限なくいつまでも預かってもらえるわけではありません。基本の預かり時間や延長保育の時間についてきちんと確認しましょう。
送迎の利便性
自宅や職場に近い、利用する駅に近い、園バスがあるなど、送迎のしやすさも重要なポイントです。あまりに自宅から遠い園を選んでしまうと、時間を取られて余裕のない毎日になりかねません。
保育料や諸経費の違い
幼児教育・保育の無償化により、幼稚園、保育園、認定こども園とも、3歳~5歳児クラスの子どもたちの利用料は無料になりました。しかし、給食費や学校教育費、行事費などその他の費用は支払う必要があります。
一般的に公立より私立の幼稚園や保育園の方が年間の支払い額は高い傾向に。幼稚園の場合は、制服や通園バッグなど園グッズの費用がかかることも。また、延長保育の費用も園ごとに設定されています。幼稚園、保育園の費用は長ければ6年間支払うもの。無理なく支払える額なのかをよく調べておきましょう。
子どもの性格や発達段階も十分に考慮して
園に通う子ども自身が楽しくすごせるかどうかも、園選びでは非常に重要なポイントです。子どもの特性に合った園を選ぶには、どのような特徴をチェックしたらいいのか把握しておきましょう。
集団での遊び、行動を重んじている園か
友だちが大好きで積極的に関わりたがる子どもは、子ども同士の関わり合いや集団での遊び・学びを重視している園なら生き生きと過ごせるでしょう。逆に、集団が苦手で一人で集中して過ごすのが好きな子の場合、設定保育(主に集団で目的に沿って行う)よりも自由保育(子ども自らが遊びを選択)を多く取り入れる園も選択肢に。
ただ、子どもは日々成長、変化していくもの。人見知りだった子どもが入園してから友だちと遊ぶのが大好きになることもあります。入園前の性格も踏まえつつ、どのような子どもに成長してほしいかを考えることも大切です。
遊びと学びのバランスはどうか
幼稚園も保育園も、具体的な教育内容やその時間数についてはさまざまです。数や言葉、英語などの学習を重視して、机の前に座る時間が多い園もあります。それを楽しいと思える子どももいますが、じっと座っているのが苦手、集中力が続かないといった子どもも。
幼児期は遊びが学び。学習的な充実度ばかりで選ぶのではなく、のびのびとした遊びと学びのバランスがとれているか、という視点で考えてみましょう。
特別な支援が必要な場合の対応
発達が気になる、障害があるといった子どもの場合、受け入れ可能な園かどうかが第一の条件となります。園によっては、ケアが必要な子どものクラスに職員を多く配置する“加配制度”を設けているところも。障害がある子どもを支援する体制がある幼稚園、保育園もあります。
検討している園に対しては、「加配制度や障害児保育の実績があるか」「ケアが必要な子どもにどのような配慮をしてもらえるか」といったことを確かめておくといいでしょう。
まとめ
幼稚園等の柔軟性は高まりつつある
近年は認定こども園に移行する幼稚園や保育園が増加したほか、従来型の幼稚園でも預かり保育を充実させる、プレ入園のクラスを作るなど受け入れ態勢が柔軟になってきています。「幼稚園」「保育園」という型にはめて考えず、各園のサポート体制のほか保育方針や行事内容などを把握したうえで検討しましょう。
家庭内での優先度の決定と、実際の見学が重要
人生の土台となる幼児期を過ごす幼稚園や保育園。園の保育や教育の充実度はもちろん、子どもの性質との相性を十分考慮する必要があります。また、親の仕事の都合や立地、費用も選択を左右するもの。将来的に就業スタイルを変えたいと考えているなら、それも見越して選ばなくてはなりません。
子どもにはどんな環境でどのようなことを身につけてほしいのか、仕事と育児のバランスをどうとっていくかを夫婦間で早め早めに検討すること。そして、各園を見学して自分の目で子どもたちの様子やスタッフの雰囲気などを把握すること。それがベストな園選びにつながります。

株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。

【執筆者】逸見 浩督(へんみ ひろただ)
株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。