【幼児教育の豆知識】子どもが夜寝ない!幼児がぐっすり眠れるための対策について徹底解説!
厚生労働省によると(※)、1~2歳児の理想の睡眠時間は11~14時間、3~5歳児は10~13時間とされています。しかし実際はこの睡眠時間に足りていない子どもが多く、問題となっています。
幼児期の睡眠は、子どもの成長や生活に大きく影響します。しかし、まだ自主的に睡眠サイクルを整えることはできません。親がサポートして、より良い睡眠を取れるように生活リズムを整えていく必要があるのです。
その具体的な取り組み法や、子どもが寝ない理由について詳しく解説していきます。
(※)健康づくりのための睡眠指針の改訂について(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001151834.pdf
子どもの睡眠の特徴とは
幼児期の睡眠は、大人の睡眠と異なる特徴があります。それを踏まえたうえで、子どもがなかなか寝ない理由を見ていきましょう。
子どもは成長とともに眠れるようになる
わたしたち大人は、たいてい夜まとめて眠る習慣を持っています。でも、お母さんのおなかにいる胎児や生まれたばかりの赤ちゃんは、少し起きてはまた寝て、の繰り返し。短時間ずつ何度か眠る「多相性睡眠」が普通なのです。
それが、大きくなるにつれて眠れる時間が増え、眠る回数は減っていきます。個人差がありますが、生後4カ月頃には夜間にある程度長い時間眠れるようになります。1歳頃は午前睡、昼寝、夜の3回の睡眠に。2~3歳では昼寝と夜の2回になり、3歳を過ぎると昼寝もなくなって、大人と同様に夜にまとめて眠る子が多くなります。この状態を「単相性睡眠」といいます。
幼児期はこの変遷の時期であり、睡眠サイクルが確立される途中の段階。昼寝の影響で夜にうまく眠れない、ということも当然あります。親はあせらずに、子どもの健やかな睡眠サイクルを築くサポートをしてあげる必要があるのです。
子どもがなかなか寝ない理由
子どもが寝ないのは、ただ単に「寝たくない」と意地を張っていたり、遊びたかったりするだけではありません。運動量や昼寝、昼間の刺激などさまざまな要因があるのです。
朝起きる時間が遅い
なかなか起きないからといって朝いつまでもダラダラと寝させていると、夜になっても眠くなりません。結果夜更かしをして、また次の朝も遅くまで起きられない、という悪循環になってしまいます。前の晩に寝るのが少しくらい遅くても、朝は決めた時間にきちんと起こすようにしましょう。
「平日はいつもの時間で起床するけれど、休みの日くらいはいいのでは」と思うかもしれません。しかし、大人よりも体内時計が定まっていない子どもの場合は、平日と同じリズムで寝起きするのが理想とされています。休日に起床、就寝時間を大きくずらすと、次のウィークデーまでリズムがくるって、早く寝られないということにもなりかねません。
いつもと違う刺激を受けた
いとこが遊びに来て大はしゃぎ、遊園地に行って大興奮した、など、普段と違う大きな刺激を受けると疲れてよく眠れそうですが、逆になかなか眠れなくなることもあります。こんなときは、優位になっている交感神経を鎮めて、体をリラックスさせ眠りに導く副交感神経の働きを高める必要があります。静かな音楽を流してあげる、ハグや手を握るといったスキンシップなどで、落ち着きを取り戻すようにしてみましょう。
もっと遊んでいたい
3~5歳で体力が付き、昼寝も必要がなくなってくると、夜も遅くまで起きていられるようになります。ものごとへの興味・関心も強くなり、「もっと遊びたい」という気持ちから就寝を拒否することも。
特に、寝る直前まで興奮するゲームや体を動かす遊びをしているとなかなか気持ちが切り換えられません。就寝1時間前ごろからは照明をやや暗くして、本を読むなどリラックスして過ごせるようにするといいでしょう。
日中に十分運動できていない
たっぷりスポーツをした日やレジャーで動き回った日は、大人も子どもも自然とまぶたが閉じてしまいますね。私たちの体は、睡眠によって疲労から回復しようとしているのです。毎日なかなか子どもが寝ない、という場合は、日中に十分体を動かしていなくて、さほど疲れていないというしるしなのかもしれません。
近年は、環境の変化や生活の変化により外遊びは減少傾向です。しかし、幼児にとって外でのびのびと遊ぶことは、心身の成長に欠かせません。できる範囲で遊ばせてあげるようにしてあげたいもの。「忙しくてなかなか時間がない」という保護者は、「保育園への送り迎えを徒歩にする」「子どもと歩いて近所のスーパーへ買い物に行く」など、日常の行動をより体を動かせるスタイルにチェンジしてみるのもおすすめです。
昼寝の長さ、時間が問題
0~2歳、子どもによっては3歳でもまだ一度にまとまった睡眠を取るリズムができておらず、昼寝が必要です。しかし、あまりに長時間の昼寝をとってしまうと、眠るべき夜に覚醒してしまって寝られない、ということに。2、3歳であれば、昼寝の時間は長くても2時間以内にとどめましょう。
また、昼寝の時間も大切。夕方近くに寝てしまうと夜の睡眠に響きます。昼寝をするなら早めに、15時までに起きられるようにするのがベターです。とはいえ、夕方に眠くなってしまうこともありますね。3,4歳頃でも体力が切れて夕方寝てしまうこともあります。そんなときは、夕飯や入浴を前倒しするなどして目が覚めるようにトライしてみても。それでも起きていられないほどなら、無理に起こす必要はありません。短時間、30分以内程度で寝させてあげましょう。短い間でも眠気が解消され、夜の睡眠への影響も少なくてすみます。
お風呂の時間が適切ではない
子どもの入浴のタイミングも、実は睡眠に関係します。夕飯の前、食後、寝る前と家庭によってタイミングはさまざまですが、スムーズに眠りにつくには、就寝の約1.5時間前に入浴するのがいいとされています。というのも、人は眠るときに皮膚表面から熱を放出し、体の深部体温を下げようとします。お風呂に入ることで体温を一時的に上げると、反動でぐっと体温が下がります。その体温が下がる間の時間が、約1.5時間とされているのです。
寝る直前に入ったほうがポカポカしていいような気がしますが、体温は下がりにくい状態。就寝時間から逆算して入浴時間を考えるといいでしょう。熱すぎるお湯や長時間の入浴は交感神経を刺激してかえって目がさえてしまいます。39~40度のぬるめのお湯に15分程度ゆったりつかるのがおすすめです。
長時間、寝る前のスクリーンタイム
スマホで動画を見る、ゲーム機で遊ぶ、テレビを見る、タブレットで遊ぶ。こうした「スクリーンタイム」に子どもが費やす時間は、近年増加傾向に。しかし、このスクリーンタイムが子どもの睡眠に悪影響を与えているのです。一つは、昼間にデバイスを見ていると体を動かすことが少なく、運動不足で夜に眠くなりにくい状態に。また、多くの動画やゲームは子どもにとっては刺激が強いもの。脳が興奮状態になってしまうとスムーズな入眠を妨げてしまいます。もっとも避けたいのは、寝る直前の使用です。視聴した刺激で脳が覚醒してしまうだけではなく、画面からのブルーライトは睡眠を促すホルモンの分泌を妨げるとされています。
スマホやタブレットは使い方次第で子どもにもとても役立つものですが、長時間使わせすぎず、寝る約2時間前には使用を控えるようにしましょう。親もベッドに入ってスマホをチェックすることもあるかと思います。しかし、それでは不公平感が生まれてしまいます。「寝る前はデバイスは見ない、手元から離しておく」ことを、一緒に実行していきましょう。
保護者の帰宅時間や夜更かしも影響
幼児は一人でご飯やお風呂をこなすことができません。親が何時にしてくれるかで、寝る時間も変わってきます。両親ともに帰宅が遅く、夕飯やお風呂の時間が遅いと、子どもの就寝時間もどうしても遅くなりがちに。限られた時間で子どもが早めに寝られるようにするには工夫が必要です。前の晩に夕飯を作り置きする、ミールキットなどの利用で買い物の手間を省く、家事は翌朝に回すなど。もちろんお父さん、お母さんが協力することが重要です。
また、親が夜遅くまで起きているようだと、子どもは「自分だけ早く寝たくない」と思ってしまいます。就寝時間に近づいたらテレビを消す、みんな歯みがきをするなど、家族全体で眠るモードにしていきましょう。寝かしつけをするなら、「残りのタスクは朝に」と一緒に寝てしまう方がいいかもしれません。
子どもの成長において睡眠は非常に重要
大人にとっても睡眠は大切ですが、特に成長期の子どもにおいては十分な睡眠時間と質の良い睡眠は欠かせません。
「寝る子は育つ」というように、体の成長を促す成長ホルモンは寝ている間に分泌されます。しかし、睡眠時間が足りていないと十分に分泌されず、結果的に背が伸びないということになりかねません。また、日中にたまった疲労が解消されず、元気に遊べない、病気になりやすいという弊害も。
さらには気持ちが不安定になり、すぐにイライラする、やる気が出ずものごとに集中できなくなるなど、睡眠不足は子どもの心にも影響してくるのです。
【年齢別】子どもが寝ない場合の対策ポイント
子どもが寝ない理由を踏まえて、その対策を紹介していきます。大きくは、生活習慣の見直しと寝る前のルーティンの二つ。健康的な日中の過ごし方、そして、自然と眠たくなる習慣が大切なのです。
生活習慣の見直し
まず取り組みたいのは、生活習慣の見直しです。早寝早起きを心がけ、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴び、体内時計をリセットします。睡眠へと導くホルモン「メラトニン」は、太陽の光を浴びた約14時間後に分泌が増加していくとされているので、朝起きてすぐ太陽を浴びるのは、スムーズな睡眠への第一歩なのです。
三食を決まった時間に食べる、適度な運動をすることも大切です。栄養バランスの取れた食事は質の良い眠りにつながります。特に朝食は一日の始まりとして体内時計を整える効果もあるので、しっかりととりましょう。幼児の場合、コーラや栄養ドリンクといったカフェインの多く含まれた飲み物は、眠りを妨げるので避けます。
こうした規則正しい生活を心がけるだけで、徐々に眠りやすい状態に改善されていくでしょう。
寝る前のルーティンを整える
さらに、寝る前に決まったことを行う「ルーティン」が定着すれば、より眠りやすくなります。寝る1.5時間前の入浴、眠る1時間前には電気を暗めに、といったこと以外に、その子に合ったルーティンを作るのもいいでしょう。例えば、寝る前には毎晩水を少し飲む、本の読み聞かせをする、ハグする、今日のできごとを少し話す、など、あまり興奮させず落ち着く内容がおすすめです。毎日欠かさずルーティン化することで、何も言わなくても「これをしたら寝る時間」と子どもが覚えるようになります。
年齢別にチェック!子どもが寝ない場合の対策
幼児期といっても、0歳と5,6歳では睡眠サイクルも心身の状態も大きく異なります。それぞれの成長段階に合わせて、寝るための対策を考えましょう。
0歳
0歳の乳児はまだ言葉で伝えることができません。まずは、部屋の温度や湿度などが快適に眠れる状態か親がチェックします。エアコンや扇風機の風の向きを調整し、直接当たらないようにして冷えを防ぎましょう。寝る前や夜間の授乳、おむつ替えの際には電灯の光量を控えめにし、すぐに入眠できるようにしてあげます。
1~2歳
この年齢は親と離れることを不安に思う「分離不安」により、ベッドに行くのを拒むこともあります。子どものお気に入りの毛布やぬいぐるみなどを一緒に持っていくことで落ち着く場合もあるので、試してみてもいいでしょう。ただし、睡眠中に窒息しないように置き場所や数は考える必要があります。
また、イヤイヤ期を迎える子も多数。親が「寝なさい」というと余計に反抗して眠ろうとしないこともあるかもしれません。大声で怒ったりすると、ますます目がさえて逆効果に。「今はそういう時期」と心得て、冷静に長い目で見守っていきましょう。
3~4歳
3歳になると、大多数の子どもが保育園か幼稚園に通うようになります。朝決まった時間に登園することになるので、これを機に生活リズムと睡眠サイクルを見直してみましょう。親が勝手に決めてしまうのではなく、子どもといっしょに健やかな睡眠をとるための時間割を考えてみてください。
5~6歳
体力が付き、昼寝をしなくても長く起きていられるようになります。だからといって夜更かしは厳禁。早寝早起きの習慣づけをしっかり行いましょう。小学校入学に向けて、歯磨き、トイレ、あいさつ、就寝といった一連の流れを自ら行えるよう、ルーティン化していくといいでしょう。
叱らず、子どもの心をリラックスさせてあげよう
子どもがなかなか寝ないと、つい「早く寝なさい!」と叱ってしまうこともあるかもしれません。しかし、怒られると子どもの気持ちは乱れ、ますます眠れなくなってしまいます。怒るのではなく、子どもをリラックスさせる方向で対策を考えることが大切です。
眠れないなら話を聞く、手を握ってあげる、静かな音楽を流すなど。子どもの心が静まることで副交感神経が優位になり、眠りやすくなります。もちろん、興奮を高めてしまうスマホやゲーム、騒がしい音楽はNGです。
一日を振り返りながら、親はあたたかく静かに子どもの眠りを見守ってあげましょう。
まとめ
家族みんなで規則正しい生活を
幼児はまだ眠りの初心者。よりよい睡眠のためには、親をはじめ家族が見本となることが大切です。子どもだけを早く寝かせようとするのではなく、家族みんなが夜は早く寝て、朝は早く起きる。起きたら太陽の光を浴び、朝食をしっかり食べる、ということです。もちろん、家事や仕事で早く寝られないこともあります。その場合は、子どもに合わせて寝た「ふり」でもいいのです。とにかく、「家族みんなが寝る体制なんだ」と感じられることが重要です。
そのほか、寝る前にいつまでもスマホを見ない、布団の中にスマホを持ち込まないということも家庭で実践を。そうすれば子どもも自然とその習慣が身に付き、成長してからも健康的な生活を基本として考えられるようになります。
改善しない場合は発達障害の可能性も
発達障害の一種である自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)では、睡眠障害を併発することも多くあります。その場合、寝つきや寝起きが悪い、寝室に行き渋る、睡眠リズムが不規則といった傾向が見られます。普段の様子も含め、発達障害の心配がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。

株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。

【執筆者】逸見 浩督(へんみ ひろただ)
株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。