【幼児教育の豆知識】子どもがすぐに怒る、キレる…。親の適切な対応で、感情のコントロールができる子どもに
気に入らないことがあればすぐに激怒したり、泣き叫んだり。いわゆる「キレやすい」子どもの場合、親としては今後について不安になることもあるでしょう。子どもの感情が爆発するのにはいくつかの原因が考えられます。今回は、その原因および子どもがかんしゃくを起こしたときの親の対応法について具体的に解説。理由と対策を知り、親がしっかり受け止めていれば、子どもも次第に自分で落ち着くことを学んでいくでしょう。
Contents
子どもの感情が爆発する原因とは?
子どもの感情の爆発に対応するためには、まずその原因を知ることが重要です。主な原因としては、個性のほか日頃の親の接し方、環境の変化などがあげられます。それぞれの内容を参考に、自身の子どもは何が原因なのかをよく考えてみましょう。
人一倍、感受性が豊かである
ちょっとしたことで泣いたり怒ったりしてしまうのは、とても感受性が豊かな子かもしれません。周囲の物事や人の言動にとても敏感で、周囲が「こんなことで?」と思うようなことでも影響を受けてしまう場合も。大きな音やまぶしすぎる光といった環境に落ち着かなくなったり、人の気持ちを考えすぎて自分の意見を抑え込んでしまったりすることもあります。
うまくいかないことに対してのショックも人一倍大きいため、大きなかんしゃくにつながってしまうケースも。
そんなときは、子どもの気持ちを否定することなく受け入れ、落ち着けるようにしてあげましょう。そして、何が原因で心が乱されているのか、それはどの程度イヤなことなのかを一緒に確認します。気持ちの度合いを数字や図で表してもいいかもしれません。子ども自身が客観的に自分の気持ちを捉えられれば、爆発を起こすことも少なくなるでしょう。
気持ちを言葉にできず、怒りで表現してしまう
2,3歳のイヤイヤ期は、気持ちをうまく表現できずに怒ることはよく見られます。イヤイヤ期を過ぎて成長しても、怒るという表現ばかり出てくるようであれば、子どもの内側の感情が十分に発達していない可能性があります。
例えば、育児放棄されて育った子どもはキレやすい面があるといわれています。育児放棄までいかなくても、親が怒ってばかりいる、子どもの悲しみや怒りに対して「静かに!」「そんな怒ることではないでしょ!」などそれを無視した発言をする、といったことが続くと、子どもは自分の感情を抑え込むようになってしまいます。その結果、自分で自分の気持ちがわからなかったり、適切な言葉にできなかったりして、怒りという形でしか表現できなくなることも。
そういったことを防ぐためには、日頃から子どもの感情と向き合い、そのまま受け止めることが大切です。また、親も「やめなさい!」「怒るわよ!」などの怒りのコミュニケーションではなく、「今の言葉は悲しかった」「その遊びはケガをしないか心配になる」など、普段から気持ちを言葉にして、子どもに伝えるようにしましょう。
成長段階における「反抗期」
特に親に対してむやみに反抗する、ちょっとしたことで怒る場合は、いわゆる「反抗期」かもしれません。反抗期、といえば中学生以降の第二次反抗期を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、就学前から小学校低学年にかけても「中間反抗期」と呼ばれる時期があります。中間反抗期の特徴としては、すぐ口答えをする、言うことを聞かない、親の手出しを嫌がるなど。
進学や習い事の開始、友人関係も増えどんどん世界が広がる中で、自分が思ったようにはうまくいかないこともあります。そのくやしさやいら立ちをまだ上手に処理できず、モヤモヤを親にぶつけてくるのです。
ダメなことはきちんと叱りつつ、子どもの思いを受け止めて、できることはほめ、認めてあげることが大切です。
転園や入学などストレスのある環境
引っ越しに伴い新しい幼稚園に移った、小学校に入学したなど、環境が大きく変わることは子どもにとってストレスに。外ではがんばって気を張っているため、ふとしたときに感情が爆発してしまうこともあります。新しい環境で友だちや先生とまだ馴染めない、といったこともあるかもしれません。
親は子どもの話をよく聞いてあげて、家では適度に甘えさせてあげましょう。家庭が心安らげる場であれば、子どもは気持ちを切り替えて外での生活をがんばることができます。
発達障害の可能性も
ADHDやASDといった発達障害では、感覚が鋭敏、言動のコントロールが難しいなどの特徴があります。それにより、ちょっとしたことでかんしゃくを起こしたり大声を出したりすることも。発達障害が気になった場合は親が思い込みで判断せず、専門家による診断を受けることが第一です。日常生活の過ごし方についてアドバイスをもらい、発達障害の子どもにとってストレスの少ない環境を作るようにしていけば、感情の爆発もある程度抑えることができるでしょう。
子どもの感情が爆発したとき、避けるべき対応
泣いたりわめいたりしている子どもを前にすると、親は「何とかしなければ」となだめたり怒ったりしてしまいがちに。でも、間違った対応では火に油を注ぐことになりかねません。特に避けたい対応法をピックアップしたので、チェックしておきましょう。
怒鳴る、無視をする
静かにしてほしいからといって、大声で怒鳴ってしまう、もしくは子どもを無視し続けるのは子どもを傷つけることに。萎縮したり、「親に見放された」と自己肯定感を失ったりというマイナスな結果につながってしまいます。
クールダウンするために一時距離を置くのは有効ですが、その時も「ママは今お話できない状態だから、落ち着くまで隣の部屋にいるね」など、声をかけてからにするといいでしょう。
「どうして?」と問い詰めてしまう
子どもの感情が爆発している理由を知りたくても、「なんで怒っているの?」「どうしてこんなことしたの?」と問い詰めるのは逆効果。気持ちが高ぶっていたり、うまく言葉にできなかったりすることもあります。それなのに「なぜ」「どうして」としつこく聞かれると、責められているように感じ、余計にマイナスの感情が増幅してしまうのです。
「なぜ」「どうして」ではなく、「怒ったきっかけはなんだったのかな」など、子どもが自分の感情の動きを振り返れるような言葉かけをしてあげるといいでしょう。
子どもの話を否定で返してしまう
感情の爆発について子どもが理由を話したときに、「そんなことくらいで怒らないの!」とか「それはあなたが悪いんでしょう」などと、否定的に返してしまうのもNGです。「せっかく話したのに」と子どもはがっかりして、「話してもムダ」「怒られるだけ」とより自分の殻に閉じこもるようになりかねません。
こうした対応のNG例は、いずれも子どもの気持ちを置き去りにして親本位の言動を取っているというもの。それでは子どもの感情は収まりません。大切なのは、子どもに寄り添った対応を取ることです。次章で具体的に解説していきます。
感情の爆発にどう対応する?具体的な4つの行動
子どもの感情が爆発したとき、親は子どもの悲しみや怒りを否定するのではなく、それに寄り添い、ともに考えてあげることが重要。そのための対応の流れを、4つのポイントにまとめて紹介します。
まずは親がクールダウンする
子どもの言動にイラッとしても、つられて親も激怒してしまうと互いに傷つけ合うことに。このままでは冷静に対応できない、と感じたら、子どもの安全を確認していったん距離を置きましょう。違う部屋に行くなど物理的に離れて、心を落ち着けるのです。子どもの話を聞く余裕ができたら、改めて子どもと向き合いましょう。
子どもをいったん落ち着かせる
「何で怒っているの?」とすぐに原因を聞きたくなるところですが、子どもが落ち着かないとそれも困難です。人目がない静かなところに連れていく、目を閉じて深呼吸させるなどして、子どもの気持ちが怒りから離れられるようにサポートを。ぎゅっと抱きしめる、手を握るといったスキンシップも有効。ただ、触れられたくない子どももいます。わが子の特性に合ったクールダウンの方法を押さえておきましょう。
子どもの話に耳を傾け、気持ちに寄り添う
子どもが落ち着いたら、怒っていた理由を聞きます。なかなか話せなくても、「言わなきゃわからないでしょ!」などせかすような言い方はNG。どうしても話せないようであれば「気持ちが落ち着いたらお話ししようね」と、ペースに合わせて対応を。そして、子どもが話すことにしっかりと耳を傾けて、受け止めてあげましょう。
親としてはアドバイスしたい気持ちにもなりますが、そこはぐっとこらえ、「だから腹が立ったんだね」「それは悲しかったね」など子どもの気持ちに寄り添うことに集中します。そうすることで、子どもはより落ち着くことができるでしょう。
今後はどうすればいいか、子どもとともに考える
たびたびの感情の爆発は子ども自身を疲れさせ、悲しい気持ちにさせます。同じことを繰り返さないように、親が気持ちの整理をサポートしてあげましょう。
まずは、「こういうことが起きたら、今度はどうしたらいいと思う?」と子ども自身に考えさせます。どんな答えが返ってきても否定せずに、受け止めてあげること。親の提案はそのあとです。答えるのが難しいようであれば、考えるヒントを与えてあげます。「こうしなさい」という親の押し付けだけにならないように気を付けましょう。
子どもの感情を上手にコントロールするためのヒント
子どもが自分で感情のコントロールがうまくできないうちは、感情の爆発を防ぐために親がある程度サポートしてあげるといいでしょう。感情が爆発しそうなとき、気持ちが静まっているとき、ストレスの発散の3パターンに分けて、気持ちのコントロール法を紹介します。
今にも爆発しそうなとき
子どもの感情の高まりを感じたら無理に抑え込むのではなく、気持ちを切り替える、うまくそらすことを考えてみましょう。
場所を移動して雰囲気を変える、楽しいことを言って笑わせる、好きなおやつを与える、お気に入りのおもちゃを渡す、など。いろいろと試してみて、子どもが落ち着いたパターンを把握して準備しておくと、焦ることなく対応できます。
気持ちが静まっているとき
感情が落ち着いているときを見計らって、どうして感情が爆発してしまうのか、その理由や引き金となる事柄を一緒に振り返ってみましょう。
「いつもの場所に物がなかった」「自分の物を勝手に使われた」など、子どもが話す内容から感情の爆発のきっかけをパターン化。子どもがそれを自覚できれば、感情が乱れるシーンを回避できたり、自己の怒りを予防できたりということにつながります。
また、「さっきは〇〇で悔しかったんだね」「悲しい気持ちになったんだね」など、子どもの気持ちを細かく具体的に言語化して聞かせてあげるのもおすすめです。子どもが自身の感情を表す言葉を増やすことができれば、怒りや涙ではなく言葉で表すことができるようになります。
ストレスがたまる前に発散させる
幼い子どもは、「自分のストレスを解消する」という考えもその方法もまだ理解できていないもの。親がうまくストレスを発散できるように手助けしてあげると、感情の爆発の予防につながります。
最近子どもがちょっとイライラしているな、がんばりすぎているな、と感じたときは、子どもに合った方法でストレス発散をさせてあげましょう。例えば、外で思い切り体を動かす、おいしいスイーツショップに連れていく、カラオケで大声を出す、など。いつもと違う体験で目いっぱい楽しんでリフレッシュできれば、気持ちも少し治まるでしょう。
まとめ
怒ったり泣いたり、感情の表現自体は悪いことではない
親にとっては心配な子どもの感情の爆発ですが、感情を表現することは決して悪いことではありません。「怒る」ということは、生きる上で自身を守るために必要な感情でもあります。親は、子どもの怒りの奥にある真の感情を理解することが大切なのです。
大人もそうですが、思いきり声を出したり泣いたりすることで気持ちが切り換えられることもあります。怒りたい、泣きたい気持ちを常に抑え込むのではなく、他者に迷惑が掛からないのであれば、思う存分発散させてあげることもひとつの方法です。
子ども自身の葛藤(かっとう)も理解してあげよう
子どもも、幼いながら自分の気持ちをうまくコントロールできないことをつらく感じています。それを叱りつけるとさらに反抗的になるばかり。親は大きな気持ちで受け止め、子ども自身が感情をうまく処理していけるように、そばでサポートしていきましょう。

株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。

【執筆者】逸見 浩督(へんみ ひろただ)
株式会社ヘーグル 理事長
30年以上にわたって、幼児期からの理想的な能力開発と学習環境を追求、独自に開発した「親と子の共育大学のプログラム」など、親子でともに成長できる子育て、教育メソッドは絶大なる人気を誇る。